アイドリングストップ搭載車の車載マイコン向け汎用システム電源を開発

2014年10月21日 <要旨> ローム株式会社(本社:京都市)は、HEVやEVを始めとする自動車の電動パワーステアリング、燃料噴射装置などに使われる高機能な各種マイコンに最適な、システム電源「BD39001EKV-C」を開発しました。 本製品は、独自の新しい昇降圧自動切り替え制御方式を採用したことで、バッテリー電圧が降下するアイドリングストップ後にも安定した電圧供給を可能にし、同時に電力変換効率を従来品比で最大5%と大幅に向上することができました。さらに、標準化が進む自動車業界に対して、さまざまなマイコンに適応できるように起動シーケンス設定機能を搭載しています。 2014年3月より既にサンプル出荷(500円/個:税抜)しており、2014年12月から当面月産10万個の体制で量産を開始する予定です。生産拠点は前工程がローム浜松株式会社(浜松市)、後工程がROHM Electronics Philippines, Inc.(フィリピン)となります。 <背景> 近年、自動車業界はプラットフォームの統一化(標準化)を進めており、使用部品の共通化が全世界的に推進されています。今まではカスタム性の高い専用電源や特定用途向けの高性能品が要求されていたのに対し、どんなマイコンにも使用可能で、さまざまな状況に適応できる製品が求められており、この動きは今後ますます加速すると推測されます。 また、低燃費化の要求により、アイドリングストップ搭載車が増加していますが、アイドリングストップ後のバッテリー変動(クランキング)でマイコンが誤動作しない対策が求められています。 ロームはこれらの動きにいち早く対応し、汎用性が高く、標準化の流れに沿った、アイドリングストップ後にも安定した電圧供給が可能な電源ICを開発しました。 <新製品の詳細> 「BD39001EKV-C」は、パワー系最先端プロセスである0.35µmのBiCDMOSを採用し、ロームが得意とするアナログ設計技術を駆使することで、耐圧40Vと最低駆動電圧4Vという幅広い入力電圧範囲を実現しました。 アイドリングストップ対応のために、新しい昇降圧自動切換え制御方式を採用したことで、バッテリー電圧変動(5V以下)時にもマイコンに必要な5Vを安定して供給でき、合わせて電力変換効率も従来品比で最大5%向上しています。 昇降圧自動切換え制御方式による可変のプライマリ電源を基準に、マイコンのコア用電源(3.3V DC/DC)、I/O用電源(5V LDO)という常に安定した電源機能に加えて、マイコンの動作を監視するウィンドウ式ウォッチドッグタイマー機能などの各種監視機能による高い信頼性も同時に、かつコンパクトに提供します。 ロームは今後も車載向けに、汎用性が高く標準化の流れに沿った、省エネ、省スペース、高信頼性を実現する電源ICの開発をしていきます。 <新製品の特長> 1. 新しい昇降圧自動切り替え制御でクランキング時にも安定動作、同時に従来品比で最大5%向上となる驚きの省エネ性能も実現 昇圧回路と降圧回路を自動で切り替えることができるため、アイドリングストップ後のエンジンスタート時に5V以下となるバッテリー変動(クランキング)も気にすることなく、マイコンの正常動作に必要な電圧を常に安定して供給可能です。 同時に、クランキング時の電力変換効率においては、従来品比で最大5%(条件:Vin=4V、Vout=5V、Iout=2A、Fosc=350kHz)向上させることに成功しており、まさにアイドリングストップ搭載車に最適な電源ICとなっています。 2. マイコンを選ばない起動シーケンス設定機能 EN端子に外付けのコンデンサを接続することで、マイコンに対する起動シーケンスを自由に設定する事ができるため、高い汎用性を誇り、さまざまなマイコンに使用する事が可能です。これにより、周辺部品やプラットフォームの共通化に貢献します。 3. 高信頼マイコンを実現するウィンドウ式ウォッチドッグタイマー ウォッチドッグタイマーはマイコン信号の有無を監視し、マイコンに異常があった場合に、リセットをかけて初期の正常な状態からスタートさせる機能です。本製品には、マイコン信号の有無だけではなく、周波数変動までも監視する、高機能なウィンドウ式ウォッチドッグタイマーを搭載しており、マイコンのさらなる信頼性向上に貢献します。 ■ 新製品の製品機能 出力数・出力電圧を変更したラインアップも開発中です。 品名 入力電圧 出力 発振周波数 シーケンス 設定 リセット 機能 パッケージ CH1 CH2 CH3 NEWBD39001EKV-C 4~30V (耐圧:40V) 昇降圧 DC/DC 可変 (FET外付け) 降圧DC/DC 3.3V(0.9A) LDO 5V(0.6A) 200kHz~550kHz ○ CH2 CH3 HTQFP48V (9.0×9.0×1.0mm) NEWBD39000EKV-C 降圧DC/DC 1.23V(0.9A) LDO 5V(0.6A) ☆BD39002EFV-C – LDO 5V(0.6A) CH3 HTSSOP-B30 (10.0×7.6×1.0mm) ☆BD39004EFV-C – LDO 3.3V(0.6A) ☆開発中 <アプリケーション> HEV / EVインバーター 電動パワーステアリング(EPS) 燃料噴射装置(FI) ADAS(ミリ波、カメラ等のECU) など、16bitや32bitの高機能なマイコン周りをコンパクトにした場合に最適です。 <用語説明> LDOとDC/DCコンバータについて 自動車のマイコン用途においては、より高機能なマイコン(16bitや32bitなど消費電力が大きいマイコン)に DC/DCコンバータが使われることが多い。 LDO (リニアレギュレーター) DC/DC (スイッチングレギュレーター) 特長 構成回路が簡単 外付け部品が少ない 変換効率が良い(省エネ) 降圧/昇圧/負電圧が可能 用途 ノイズ、コストで有利 小電力向け 省エネ、対応力で有利 小電力から大電力向け 車載マイコン用システム電源ICシリーズ(AEC-Q100対応) (372.18KB)

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