業界トップの低オン抵抗を実現した第4世代SiC MOSFETを開発

2020年6月17日 ※2020年6月17日ローム調べ <要旨> ローム株式会社(本社:京都市)は、主機インバータをはじめとする車載パワートレインシステムや産業機器向け電源に最適な「1200V 第4世代SiC MOSFET※1」を開発しました。 パワー半導体には、オン抵抗を低減すると短絡耐量時間※2が短くなるというトレードオフの関係があり、SiC MOSFETの低オン抵抗化においては、その両立が課題となっていました。 今回開発した新製品は、独自のダブルトレンチ構造※3をさらに進化させることで、短絡耐量時間を犠牲にすることなく、このトレードオフ関係を改善し、従来品と比べ単位面積当たりのオン抵抗を約40%低減することに成功しました。 さらにスイッチング時の課題となっていた寄生容量※4を大幅に削減したことで、従来品と比べスイッチング損失を約50%削減することに成功しました。 このように低オン抵抗、高速スイッチングを兼ね備えた第4世代 SiC MOSFETは、車載インバータや各種スイッチング電源など様々なアプリケーションの劇的な小型化や低消費電力化に貢献します。なお、本製品は6月からベアチップでのサンプル提供を順次開始しており、今後、ディスクリートパッケージでのサンプル提供を予定しています。 <背景> 近年、次世代電動車(xEV)のさらなる普及のため、より高効率で小型・軽量化された電動システムの開発が進められています。特に駆動の中核を担う主機インバータシステムの小型・高効率化は重要な課題のひとつとなっており、パワーデバイスにはさらなる進化が求められています。 また電気自動車(EV)においては、航続距離の短さを改善するため、搭載バッテリーの容量は増加傾向にあります。それに伴い充電時間の短縮が求められており、バッテリーの高電圧化(800V)が進んでいます。これらの課題を解決するため、高耐圧かつ低損失が実現できるSiCパワーデバイスには大きな期待がよせられています。 こうした中、ロームは2010年に世界で初めてSiC MOSFETの量産を開始。早くから車載信頼性規格AEC-Q101に準拠した製品ラインアップを強化し、車載充電器(On Board Charger:OBC)などで高いシェアを誇ってきました。今回、オン抵抗と短絡耐量時間のトレードオフを改善した第4世代 SiC MOSFETを開発したことで、既存市場に加え主機インバータを中心に採用を加速させていきます。 今後もロームはSiCパワーデバイスのラインアップを強化するとともに、デバイス性能を最大限に引き出す制御ICなど周辺デバイスやモジュール化の技術を組み合わせることで、次世代自動車の技術革新に貢献していきます。また、アプリケーション開発における工数削減や評価トラブルの未然防止に寄与するWEBシミュレーションツールをはじめ、お客様の課題を解決するソリューションを提供します。 <特長> 1. トレンチ構造の進化により、業界トップの低オン抵抗を実現 ロームは、独自構造の採用により2015年に世界で初めてトレンチ構造※5を採用したSiC MOSFETの量産化に成功。その後も、デバイス性能のさらなる向上に取り組んできましたが、低オン抵抗化においてはトレードオフの関係にある短絡耐量時間との両立が課題となっていました。 今回、ローム独自のダブルトレンチ構造をさらに進化させることにより、短絡耐量時間を犠牲にすることなく、従来品に比べてオン抵抗を約40%低減することに成功しました。 2. 寄生容量を大幅に削減したことにより、低スイッチング損失を実現 一般的にMOSFETは、低オン抵抗化や大電流化に伴って各種寄生容量が増加する傾向にあり、SiCが本来有している高速スイッチング特性を十分に発揮できないという課題がありました。 今回、ゲートドレイン間容量(Cgd)を大幅に削減したことで、従来品に比べてスイッチング損失を約50%低減することに成功しました。 <用語説明> ※1) MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistorの略) 金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタのことで、FETの中では最も一般的に使用されている構造である。 スイッチング素子として使われる。 ※2) 短絡耐量時間 MOSFETが短絡(ショート)時に破壊に至るまでの時間。通常、短絡が発生すると設計値を超える大電流が流れ、異常な発熱が発生し、熱暴走を起こし破壊に至る。短絡耐量を高めることは、オン抵抗をはじめとした性能とのトレードオフになる。 ※3) ダブルトレンチ構造 ローム独自のトレンチ構造。SiC MOSFETでのトレンチ構造の採用はオン抵抗低減に有効であると注目されていたが、デバイスの長期信頼性を確保するため、ゲートトレンチ部分に発生する電界を緩和する必要があった。 ロームは、この電界集中を緩和する独自のダブルトレンチ構造を採用することで課題を克服し、2015年に世界で初めてトレンチ構造型のSiC MOSFETの量産化に成功した。 ※4) 寄生容量 電子部品の内部等で、物理的な構造に起因する寄生の静電容量。MOSFETの場合、ゲートソース間容量(Cgs)、ゲートドレイン間容量(Cgd)、ドレインソース間容量(Cds)がある。ゲートソース間容量およびゲートドレイン間容量は、ゲート酸化膜の静電容量によって決まる。ドレインソース間容量は、寄生ダイオードの接合容量。 ※5) トレンチ構造 トレンチは溝を意味する。チップ表面に溝を形成し、その側壁にMOSFETのゲートを形成した構造。プレーナー型MOSFETに構造上存在するJFET抵抗が存在せず、プレーナー構造よりも微細化が可能なため、SiC材料本来の性能に近いオン抵抗が期待できる。 この件に関するお問い合わせはこちら

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