【掲載記事】ロームの920MHz帯特定小電力モジュールの最新技術動向

掲載記事 Contributing Articles はじめに | 広がる「Wi-SUN」の採用 | ロームグループのWi-SUN取り組み状況 | ロームのWi-SUNモジュール | WI-SUN USBドングル | 今後の展望について はじめに ロームグループでは、無線LANをはじめ、BluetoothやZigBee、そして特定小電力無線、EnOceanなど、さまざまな無線通信技術を有している。(図1) 図1. ロームグループが有する無線通信技術 近年ではスマートフォン、タブレットPC、Wi-Fiルーターの普及とそれらを利用したソリューションが急増しており、ロームグループの商品群の中では無線LANとBluetooth(Bluetooth Low Energy)が市場の盛り上がりとともに活況している。ロームグループでは、こうした市場のニーズに沿ってLSIおよびモジュールの開発に力を注いでいる。 また、今後の普及に対しさらに期待が高まっている分野がある。それが920MHz帯の特定小電力無線である。背景としては、あらゆる分野で省エネの意識が高まっており、各国で効率的なエネルギーの利用に向けた取り組みが拡大していることがあげられる。中でも住宅では、HEMS(Home Energy Management System)に注目が集まりつつある。機器同士をインターネットなどのネットワークに繋ぎ、家庭内で消費されている電力の「見える化」や、一括で管理・制御を行う事で省エネを実現するシステムなどである。 そして省エネだけでなく、構築したネットワークとセンサを組み合わせることで、温度や湿度、照度などの生活環境情報を読み取り、空調や照明といった家電をはじめあらゆる機器と通信を行い、遠隔さらに自動で制御することで快適で安全な生活への提案も考えられている。 ロームではこのエネルギーマネジメントシステムの市場をターゲットにし、920MHz帯特定小電力無線モジュールの開発に早くから注力している。 広がる「Wi-SUN」の採用 新しい国際無線通信規格であるWi-SUNは、日本では特定小電力無線と呼ばれる920MHz帯が使用され、無線LAN(Wi-Fi)と比較して低消費電力で通信距離が長いという利点から、スマートメーターや交通インフラなどのスマートコミュニティの他、M2MやIoT市場にも最適とされている。 スマートメーターのBルートでWi-SUNを採用するという電力会社が出てきて以来、Wi-SUNは日本市場で急速に注目を集めている。また、経済産業省の大規模HEMS実証実験、2016年からはじまる電力の小売り自由化、2017年にはガスも自由化され、今後HEMS市場(IoT市場)がより活発に動き出すことが予測されており、ますますWi-SUNに注目が集まっている。 図2は、HEMSの通信方式の現状を示している。まず、通信経路としては大きく3つに分類される。一つ目は、電力会社とスマートメーターをつなぐ「Aルート」。二つ目は、スマートメーターとHEMSをつなぐ「Bルート」。そして三つ目に、HEMSと各機器をつなぐ「HAN(Home Area Network)」である。 Wi-SUNの住宅への進出はBルートからはじまっており、Bルート用の認証(Wi-SUN for ECHONET Profile)がすでに確立されている。またWi-SUNアライアンスは現在HAN仕様策定中であり、近日中に確定する予定となっている。これによりますます普及に拍車がかかる見通しである。 図2. HEMSの通信方式 ロームグループのWi-SUN取り組み状況 ロームグループでは、こうした市場の動きに対し、Wi-SUNに関して先進的に取り組んできた。2014年1月には、Wi-SUNアライアンスで相互接続性を確認するための「PHY認証試験」というイベントが開催された。ロームグループは当時ラピスセミコンダクタ製のML7396B(および評価ボード)でイベントに参加し、見事Wi-SUNアライアンスのPHY認証試験合格第1号となっている。またお客様により簡単に製品を使用して頂くため”らくらく導入”をコンセプトにML7396Bを搭載したローム製Wi-SUNモジュール「BP35A1」を開発した。同年4月には、このBP35A1でも見事Wi-SUN For ECHONET Profileの認証を取得している。(図3) さらにML7396B(LSI)、BP35A1(モジュール)ともにWi-SUNアライアンスでCTBU(Certified Test Bed Unit)にも認定されており、アライアンスのリファレンスとして両デバイスともに登録されている状況だ。 図3. ロームグループのWi-SUN認証 ロームのWi-SUNモジュール BP35A1の特徴は以下のとおりである。(図4) 図4. BP35A1外観 1)汎用でWi-SUNに対応 BP35A1にはWi-SUNスタックが搭載されているので、BP35A1を組込みだけで様々な機器でWi-SUN通信が実現可能になる。あらゆる機器への組み込みが可能である点を「汎用」と表現している。 2)業界トップクラスの受信感度 ベースバンドLSIはロームグループのラピスセミコンダクタ製のML7396Bを採用しており、モジュールとしての受信感度は、業界トップクラスの -103dBm typ. (100kbps,BER<0.1%)を実現している(図5)。またLSI内部にPA専用レギュレーターを採用することで電圧変化、温度変化に対して安定した通信距離を保てるという特徴も持っている。またFEC(Field Error Collection)機能もハードウェアで実現しており、さらに高受信感度を実現する仕組みも入っている。 図5. BP35A1仕様一覧 3)使いやすい無線通信モジュール BP35A1は、無線が初めてという方でも使いやすいように開発した商品である。すでに日本の電波法認証を取得しており、Wi-SUNに必要なプロトコルスタックは全てモジュール側に格納している。また、組込み先のホストCPUとBP35A1はUARTで接続する(図6)。APIとしてはBP35A1側でコマンドインターフェースを準備しており、コマンドレベルでモジュールを制御する使用方法となる。あとはホストCPU側に機器に応じたECHONET Liteを搭載すれば、HEMSに対応した機器ができあがる(図7)。 図6. BP35A1ブロック図 図7. BP35A1ソフトウェア構成図 4)サポート体制の充実 BP35A1はベースバンドLSIからモジュールまで、ロームグループで一貫して開発しているため、お客様の質問にも十分に対応することができる。 5) 手に入れやすい 2015年1月からアールエスコンポーネンツ社、チップワンストップ社、コアスタッフ社の3社にて、Wi-SUNモジュール本体(標準小売価格:7,500円/個)と各種評価ボードのインターネット販売を開始した(図8)。 汎用Wi-SUNモジュールのインターネット販売は業界初※の取り組みとなる。そして、BP35A1でWi-SUN通信を実現するために必要な情報はすべてホームページ上に完備、誰でも手軽にWi-SUNを使うことができる。 ※2015年3月12日ローム調べ 図8. BP35A1評価ボード WI-SUN USBドングル お客様にとってさらに利便性が向上するよう、ロームはJorjin Technologies Inc.(本社:台北市、以下「Jorjin」)と共同でWi-SUNに対応したUSBドングルタイプの無線通信モジュール「WSR35A1-00」を開発した(図9)。 ロームのWi-SUN対応無線通信モジュール「BP35A1」をベースにしたUSBドングルで、アンテナ内蔵かつ電波法認証取得済み、HEMSに最適なファームウェアも搭載しているため、USBポートのある各種機器へのWi-SUN導入が容易になる。 図9. WSR35A1-00の外観およびブロック図 今後の展望について ロームは今後BP35A1をベースにファームウェアラインアップの拡充を予定している(図10)。 図10. BP35A1ファームウェアラインアップと機能一覧 ファームウェアA(仮称)を搭載したBP35A1はBルートのWi-SUN親機(スマートメーター側)、Wi-SUN子機(HEMSコントローラー側)の両方に対応している。またWi-SUN for ECHONET Profileの認証も取得済で、すでに量産している。 次にWi-SUNアライアンスの動向に合わせて以下2種類のファームウェアを準備中である。 ファームウェアB(仮称)はBルートの親・子に加えてHAN親機の機能を追加したデュアルスタックである。このファームウェアはBルート(子)とHAN(親)を1モジュールで実現できるのでHEMSコントローラーに最適なスタックである。 ファームウェアC(仮称)はHAN側に特化しており、HANの親、中継、子の機能を持たせている。HANのノード、例えばHEMS重点8機器で代表されるエアコン、照明、ソーラー、蓄電池、燃料電池、給湯器、EV充電器に最適なスタックである。 このようにロームではBP35A1のファームウェアのラインアップ強化し、お客様に最適でより使いやすいWi-SUNソリューションをそろえていく。

この記事の重要度

星をクリックして評価してください。

Average rating / 5. Vote count:

参照元