特集:タッチパネル技術 抵抗タッチパネルコントローラIC最新技術

掲載記事 Contributing Articles タッチパネルの普及背景 | 4線抵抗膜によるマルチタッチ対応ICの開発 | 抵抗膜方式タッチパネルの設計の要点 | 抵抗膜方式マルチタッチパネルの個体差合わせこみ | 今後の取り組み タッチパネルの普及背景 近年、様々な電子機器にタッチパネルが搭載されている。またタッチ検出の方式も感圧式の抵抗膜方式、容量を検出する静電容量方式、光の遮りを検出する光学方式、超音波の遮りを検出する超音波方式など多岐にわたっている。 タッチパネルの主流はスマートフォンやタブレットといった機器で爆発的に需要が伸びている静電容量方式と、ゲームやPDA(Personal Digital Assistants)、カーナビゲーション等で以前より採用され、比較的安定した需要量である抵抗膜方式に分かれる。スマートフォンやタブレットで採用された軽操作やマルチタッチが普及し、一般的な入力操作となったことにより、すべてのタッチパネルでこの操作が要求される様になっている。 世の中には抵抗膜方式を利用したマルチタッチ検出を可能とする技術もあるが、多線式やマトリックス方式となり、パネル構造が大きく変わってしまう。マルチタッチ化のために普及しつつある静電容量方式を採用するためには、構造上の理由からソフトウェアの実装方法の違いや低コスト、高ノイズ耐性が困難なため、抵抗膜方式からの置き換えは容易ではなかった(図1、表1)。一方で、抵抗膜方式でもマルチタッチのようなアプリケーションをコスト増なしに行いたいというニーズも高まってきた。 (図1)抵抗―静電構成図 (表1)静電と抵抗の比較表 4線抵抗膜によるマルチタッチ対応ICの開発 ロームでは、これらのニーズに応えるべく、従来構造の4線式抵抗膜方式タッチパネルのままマルチタッチを実現できるタッチコントローラICを開発した(図2)。 (図2)ローム抵抗タッチコントローラ使用回路図 4線式抵抗膜タッチパネルは、シングルタッチ時にはパネル端子間の接触点における分圧値から座標を検出している。2点のタッチを行うと分圧値は2点間の重心となるため、タッチ位置が2点の間の1点として座標出力されてしまう。 ロームのマルチタッチ検出技術は、4線の信号線に対し追加部品なしでそのまま利用し、タッチ検出のサンプリング時にロームが開発した専用アナログ回路と処理アルゴリズムで2点への座標分離を実現している。この際、類似技術では発生するタッチ位置と線対称の位置に発生するゴースト座標の誤出力もローム独自のアルゴリズムにより解決している。 ロームのマルチタッチが可能な抵抗タッチコントローラは用途に応じ様々なラインナップを揃えている(表2)。 (表2)ラインナップ表 アプリケーションとしても、4線抵抗膜を使うことで、今までよりさらに広い機器でマルチタッチが導入できるようになれるのではないかと期待している。例えば、抵抗膜方式では手袋をしている際でもタッチパネルを操作できる。また、車載用アプリケーションでは操作性はもちろん、ノイズによる誤動作をしないことやタッチした感覚が必要などの確実性が求められるため抵抗膜パネルが現在主流で採用されている。そこにロームの抵抗タッチコントローラを使用すれば、静電方式と同じような機能を組み込むことができ、アプリケーションの範囲が拡がるとみている(図3)。 (図3)アプリケーションのブロック図例 抵抗膜方式タッチパネルの設計の要点 ロームのタッチコントローラを使用することで、既存抵抗パネルのままでマルチタッチ化を実現できるようになったが、静電タッチパネルと比べるとパネルにタッチしジェスチャを行った際のスムーズさが課題となっていた。よりスムーズな動きを実現するには、タッチパネル自体の特性を向上させることが必要となった。特にマルチタッチにおいては、シングルタッチよりも押圧が分散されることから、より操作感の軽いタッチパネルが必要とされている。 そこでロームはパナソニック様、SMK様、翔栄様、日本写真印刷様といった大手タッチパネルメーカ様にタッチパネル開発の面でご協力頂いた。 開発された軽荷重動作パネルとタッチコントローラの調整により、検出に必要となる動作荷重を従来の1.0N程度から0.1N程度にまで向上。これらのタッチパネルは材料、構造上の違いからフィルム-フィルム(F/F), フィルム-ガラス(F/G), ガラス-ガラス(G/G)に分かれるが、各方式においてもニュートンリング(光の干渉によって現れる縞)の抑制、表面の指すべり向上、低反射、高透過性かつ高耐久性を実現している。 既存の機能を継承したまま荷重の改善に成功したこれらのタッチパネルとロームの抵抗膜方式タッチスクリーンコントローラICを合わせ込むことにより、抵抗膜方式タッチパネルでも静電タッチパネルのようなスムーズなマルチタッチが実現した。拡大、縮小などのジェスチャ動作もより軽快に行えるようになったことで、車載メーカなどへの採用が進んでいる。 抵抗膜方式マルチタッチパネルの個体差合わせこみ 一般的に抵抗膜方式タッチパネルモジュールは、端子間抵抗値に個体差がある。マルチタッチを実現する上でパネルの操作感を最大限に引き出すため、個々に合わせたパラメータ設定を行うことが必要となる。ロームでは開発から量産まで、お客様の工程に合わせた設計サポートを行っている。 抵抗膜方式タッチパネルでマルチタッチを実現するためには、従来の4線式抵抗タッチパネルからマルチタッチを実現するための情報を取得する必要がある。その情報は一見、1点タッチと2点タッチで明確な差分があるようには見えないが、必用なパラメータ設定を行なうことによってマルチタッチを実現するための有益な情報に変換することが可能である。 より具体的にはマルチタッチを行なうためには以下の設定が重要となる。 ・ 1点タッチのタッチ閾値設定 ・ 2点タッチのタッチ範囲(ダイナミックレンジ)設定 ・ 2点タッチのタッチ分解能設定 ・ 1点タッチと2点タッチの閾値設定 これらの設定は出荷工場の工程で最適な治具を用いて所望のIC操作を行なう必要がある。例えば、従来型の1点検出タイプのICにおいてもタッチパネルの接触位置とLCDなどの表示画面への位置補正を行なうために工程でタッチパネルを数箇所タッチする必要があるが、これと同様に2点の表示位置補正を行なうために、実際にタッチパネルを数箇所タッチする必要がある。 お客様だけでこれらの設定および考え方を理解し、量産工程まで落とし込むのは困難であるが、ロームではこうした設定をサポートするためのアプリケーションノートを用意しており、適切に設定を行なうことにより、お客様のパネル状況に合わせたマルチタッチを軽操作加重で実現できる。  そしてICを動作させるためのファームウェア(CPUをICに内蔵している場合)やICの座標をアプリケーションに渡すためのサンプルドライバを提供しており、ロームの抵抗タッチコントローラの導入を容易くしている。 また、パネルの経年変化や温度変化による抵抗値変動を考慮し、IC内での自動補正機能の提案を行うなど、量産後も含めた総合的なサポート体制を構築している。 今後の取り組み 近年、タッチパネル搭載の機器の中には、スイッチ部分もタッチ化されている製品が多く見受けられる。それらの製品の多くは、タッチパネルの一部をスイッチとして使用しているが、中にはタッチパネル部分とスイッチ部分が離れている製品もある。それらの製品に対し、ロームでは抵抗膜方式タッチコントローラだけでなく、静電スイッチICのラインナップを取り揃え、要望に応じて複合的な提案をすることが可能である(図4)。 またこれらの製品を複合的に動作させる際のシーケンス制御による低消費電力化にも注力し、よりお客様にとって使いやすい製品のラインアップを拡充していく。 (図4)複合案モジュール図

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