2015年3月25日 ※2015年3月25日現在 ローム調べ <要旨> ローム株式会社(本社:京都市)は、大電力(高電圧×大電流)を扱うインバータやサーボなどの産業機器で採用が進むSiC-MOSFET駆動用AC/DCコンバータ制御IC「BD7682FJ-LB」を開発しました。 本製品は、これまでディスクリート部品の構成で部品点数に課題を抱えていたSiC-MOSFET搭載AC/DCコンバータを容易に実現することが可能です。これにより、省電力化、小型化が求められるAC/DCコンバータ市場に新たな価値を提供し、SiCパワー半導体の普及による社会の省電力化、小型化に貢献します。 また、一般的なSi-MOSFET搭載のAC/DCコンバータと比較した場合では、最大6%電力の高効率化を実現し、放熱用部品を削減するなど劇的な省電力化、小型化が可能です(50Wクラスの電源時)。 一般の産業機器で使用されるAC400Vはもちろんのこと、SiC-MOSFETの特徴がより活きる高電圧AC690Vでも動作可能な保護機能を多数搭載しており、全ての産業機器の信頼性向上にも貢献します。 なお、本製品は8月よりサンプル出荷を開始する予定です。今後は、AC/DCコンバータ制御ICとSiC-MOSFETを1パッケージ化したICの開発も進めており、こちらも業界に先駆けて製品化していく予定です。 <背景> 近年、あらゆる分野で省エネへの意識が高まっており、高電圧を扱う産業機器系のアプリケーションにおいても省エネを実現し、高電圧に対応可能なパワー半導体や電源ICの採用が進んでいます。中でも既存のSiパワー半導体と比較して、さらなる高電圧対応、小型化、省電力化の実現が可能なSiCパワー半導体に期待が高まっています。 一方で、AC/DCコンバータにおいては、採用されるべきSiC-MOSFETの性能を十分に引き出す制御ICが存在せず、高電圧で電力インフラが不安定な地域での使用や、小型化や省電力化に大きな課題を抱えていました。 ロームは、これらの課題に対し、新たに最先端のSiCパワー半導体の性能を最大限に引き出すAC/DCコンバータ制御ICを開発しました。 <新製品の特長> SiC-MOSFETの性能を引き出し、劇的な省電力化に貢献 本製品には、ICのアナログ設計技術とSiCパワー半導体開発ノウハウの融合によって設計されたSiC-MOSFET駆動に最適なゲートドライブ回路を搭載しています。また、従来のPWM方式と比較して低ノイズで電力の高効率化が可能な擬似共振方式も採用しています。 これらにより、AC/DCコンバータに採用されるSiC-MOSFETの能力を最大限に引き出すことが可能になり、劇的な省電力化に貢献します。 SiC-MOSFETの駆動を可能にし、劇的な小型化に貢献 AC/DCコンバータでSiC-MOSFETの駆動を可能にしたことで、従来のSi-MOSFETでは必須であった放熱用部品(ヒートシンク)が不要になり、AC/DCコンバータの小型化、軽量化に貢献します。また、今回新製品のスイッチング周波数は120kHz動作ですが、将来的にはさらなる高周波化も視野に入れています。 高電圧AC690Vでも動作可能な保護機能を多数搭載 一般的な産業機器に使用されるAC400Vはもちろんのこと、AC690VのAC/DCコンバータでも動作可能な保護回路を形成しており、全ての産業機器に対応します。その上で電源電圧端子の過電圧保護や入力電圧端子のブラウンイン・ブラウンアウト(低電圧入力動作禁止機能)、過電流保護、二次側電圧過電圧保護など、連続駆動を要求される産業機器の電源に必要とされる多彩な保護機能を搭載し、信頼性向上に貢献します。さらに、AC/DCコンバータにおいて重要な絶縁用外付け部品であるトランスの選定自由度を上げるための保護回路も搭載しています。 <SiC-MOSFETを採用するメリット> 高耐圧領域において、SiC-MOSFETはSi-MOSFETと比較して「スイッチング損失・導通損失が少ない」「大電力対応が可能」「温度変化に強い」などの利点があります。これらの利点により、AC/DCコンバータやDC/DCコンバータなどで採用された場合、電力変換の高効率化、放熱用部品の小型化、高周波動作によるコイルの小型化などの省電力化や部品点数削減・実装面積削減を実現します。 <用語説明> SiC(シリコンカーバイト) Si(シリコン)とC(カーボン)の化合物半導体。Si半導体の限界を超える特性を実現可能なパワー半導体として期待されている。 AC/DCコンバータ 電源の一種で交流(AC)から直流(DC)へ電圧を変換する。一般的にコンセントには交流が流れており、電子機器は直流で動くため、コンセントにつなぐ電子機器には必要な部品。 MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor) 半導体部品の基本であるトランジスタの一種。外部から電圧を印加することでデバイスのON/OFF、または電流の流れを制御することができるスイッチングデバイス。 パワー半導体 用途に応じた電圧や電流に変換するために用いられる半導体で、その性能がシステムや機器の電力効率に直結する。高耐圧・大電流を扱うことが求められる。
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