業界初、1チップでEDLCのセルバランスを実現するICを開発

2014年11月20日 ※2014年11月20日現在 ローム調べ <要旨> ローム株式会社(本社:京都市)は、自動車のアイドリングストップや産業機器のエネルギー回生、瞬低(瞬時電圧低下)対策などで市場が拡大している、EDLC(電気二重層キャパシタ)の安定化・長寿命化、小型化に貢献するセルバランスIC「BD14000EFV-C」を開発しました。 本製品は、従来20個以上のディスクリート部品で構成されるEDLCのセルバランスを1チップで実現するICで、部品スペースを約38%削減、同時に部品毎のばらつきを気にする必要がなくなり、小型でシンプルかつ高信頼のEDLCシステムを構築することが可能になります。 最大6セルまで制御可能なセルバランス機能に加え、本製品を複数個直列に接続すれば、より多くのEDLCセルも同時に制御することができます。セルバランス電圧は2.4V~3.1Vに設定できるため、様々なEDLCに対応可能です。さらに、セルバランス電圧に応じて検出電圧が設定できる過電圧検出機能とフラグ出力機能を搭載し、車載の国際品質規格であるAEC-Q100にも準拠しており、安心して使用できる製品となっています。 2014年11月よりサンプル出荷(1000円/個:税抜)を開始し、評価ボードも含めて1つから購入可能なネット商社による販売も始めます。その後、2015年1月から当面月産1万個の体制で量産を開始する予定です。生産拠点は前工程がローム浜松株式会社(浜松市)、後工程がROHM Electronics Philippines, Inc. (フィリピン)となります。 <背景> EDLCは他の蓄電デバイスと比較して、急速充放電可能、長寿命、高い安全性、環境負荷軽減などの理由から、車載や産業機器などの様々なアプリケーションで使用されています。その中で、年々大容量化や高電圧化の要求も大きくなっており、高エネルギー下での使用が多くなってきました。 EDLCを高電圧化するために直列に接続した場合、それぞれのEDLCセルにかかる電圧にばらつきが生じるため、寿命もばらつくようになり、全体として安全に機能を満たす期間が短くなってしまいます。今まではディスクリートでセルバランス機能を実現し、ばらつきを抑えていましたが、多くのディスクリート部品を扱う必要があるため、部品スペースや設計負荷、セルバランス機能の信頼性確保に課題を抱えていました。 ロームはこれらの要求に応えるため、アルミ電解コンデンサやEDLCなどの開発で業界をリードする日本ケミコン株式会社のご協力のもと、小型で簡単に実装でき、保護機能も内蔵したEDLCセルバランスICを開発しました。 出展:日本ケミコン株式会社 <特長> 1. EDLCのセルバランス機能を1チップ化、部品スペースを38%削減 長年培ってきたロームのアナログ設計技術に加えて、日本ケミコン株式会社に仕様決定、サンプル評価などのご協力をいただき、従来20個以上のディスクリート部品で構成されていたEDLCセルバランス機能を業界で初めて1チップ化しました。部品スペースを約38%削減可能です。 4~6セルの検知に対応しており、シンプルにセルバランス機能を実現できるシャント抵抗方式を採用しています。自己完結で動作できるため、設計負荷を軽減することが可能です。また、任意のセルバランス電圧(2.4~3.1V / 0.1Vステップ)を設定可能で、様々な出力電圧のEDLCに対応可能です。 2. セル増加による、さらなる高電圧EDLCアプリケーションにも簡単に対応可能 EDLC市場そのものが大容量化・高電圧化へ向かっており、大容量のEDLCを直列に接続して高電圧を発生させる使用法が増えています。この用途に対応すべく、本製品を複数個直列に接続するだけでセルバランス機能を拡張することができます。簡単に、さらなる高電圧EDLCアプリケーションに対応することが可能です。 3. 車載規格のAEC-Q100に準拠し、2種保護機能でセル状態をダブルチェック セルバランス機能に加えて、システム全体の信頼性を向上させるための過電圧検出機能とフラグ出力機能を搭載しています。この2種保護機能により、セルの劣化段階まで検知することができます。また、車載の国際品質規格であるAEC-Q100にも準拠しており、車載ノイズなどの特殊環境対策も万全です。 <アプリケーション> エネルギー回生: 自動車、産業機器、建設機械などの運動エネルギー再利用 電源の安定化、瞬低対策 : 無停電電源装置(UPS)での緊急バックアップ 起動時の電源補助 : 自動車のアイドリングストップ、OA機器の急速起動 鉛蓄電池システムの置き換え : 鉛を含まないため環境にやさしく、鉛蓄電池よりも長寿命 <用語説明> EDLC(電気二重層キャパシタ) 出展:日本ケミコン株式会社 EDLC(Electric Double Layer Capacitor / 電気二重層キャパシタ) EDLCは蓄電デバイスの一種で、リチウムイオン電池などの2次電池と比較した場合、エネルギー密度(単位面積当たりの蓄電量)には劣るが、出力密度(単位時間当たりに扱える電力量)に勝るという特徴を備えている。また、充放電繰り返しによる性能劣化が少なく(長寿命)、外部短絡しても故障しない(安全)、構成材料に重金属を含まない(環境にやさしい)などの利点もある。 従来は小容量のものが、モバイル機器など小型電源のバックアップや安定化に使用されることが多かったが、近年では大容量化(300F以上)も進み、急速充放電が可能という特徴を活かし、より大きな電力を扱う車載や産業機器の電源補助やエネルギー回生などにも使われるようになってきている。

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