掲載記事 Contributing Articles 半導体メーカーのロームがつくるLED照明 | LED照明への期待 | ロームLED照明の特長と優位性 | ロームの直管形LEDランプの仕様 | 今後の展開 半導体メーカーのロームがつくるLED照明 総合半導体メーカーであるロームは、1973年にLEDを発売して以来30年以上にわたって、高品質LEDの開発・設計技術を蓄積してきた。LED照明市場におけるニーズの高まりとともに、照明用の白色LEDの高輝度化や小型薄型化に取り組む一方で、LEDを最適に駆動させるドライバLSIや電源モジュール、抵抗器など、LED照明に必要な各種電子部品の高機能化、高品質化を推し進めてきた。 2008年には、LED照明に必要な部品をすべて自社開発できる総合力を活かして、LED照明プロジェクトを発足。2009年に業界最薄の天井直付型シームレスベース照明(2009年度グッドデザイン賞受賞)を発売し、本格的にLED 照明事業に参入した。 以来、製品ラインアップの拡充を進め、直管形LEDランプのほか、LEDダウンライトや電球形LEDランプなどを相次ぎ開発。オフィスや商業施設などに多数採用いただいている。 これらのLED照明製品は、ロームのLEDデバイス技術や配光技術、高効率電源技術、制御技術の総合力を結集したものであり、すべての技術を知り尽くしているからこそ高品質で安心安全な商品の開発が可能となる(図1)。 ロームでは、今後さらに高効率化を進めることにより、より明るく高機能で、省エネに貢献するLED照明の開発を進め、製品ラインアップの拡充を進めていく。 [図1] ロームのLED照明を構成するテクノロジー LED照明への期待 照明用として実用化されてきている白色LEDは、年々発光効率も上がってきており、LED単品では蛍光灯の発光効率100lm/Wを超え150lm/Wに達すると予想されている。 このように発光効率の高いLEDを組み込んで開発された直管形LEDランプにおいても100lm/W以上の発光効率が可能になり、従来難しいとされてきたオフィスビルや商業施設などで導入が進んできている。今後も、LEDならではの特長を活かした商品展開が急速に進むと考えられる。 LEDは、従来のランプでは難しかった器具の小型化・薄型化が容易で、デザイン性を高められる特長があり、調光や調色も比較的容易に実現できる利点も多い。 LEDの性能向上と光を効率よく照らす照明器具設計。調光のLED駆動制御技術、あるいはセンサと組み合わせて、明かりが必要なときだけ点灯させるなど、さらに省エネが進むと考えられる。このように、LED照明は、新たな照明のあり方を提供する可能性を秘めており、次世代のあかりとして大いに期待されている。 ロームLED照明の特長と優位性 ロームのLED照明の最大の特長は、目にやさしく均一できれいな光であることが挙げられる。ロームで開発・製造・販売している直管タイプ、電球タイプのLEDランプは、特に従来ランプの代表である蛍光灯、白熱電球と比較してもほぼ違和感なく代替えとして使用できるレベルに仕上がっており、お客様からも好評いただいている。 それは、LEDの光は指向性が強く、直下だけを明るくするのは簡単であるが、照明は空間を明るくしなければならず、ロームでは常に広がりのある明かりを求めて開発を行ってきたその結果だと考えている。 さらに、LEDの点光源を均一な光へと実現したのは、光源の考え方と光の拡散技術によるものである。ロームのLED照明用光源には、強い光が一点に集中している大電力タイプは使用せず、小電力タイプのLEDを使用して強い光が一点に集中しないように光の面積を広げた工夫を行っている(図2)。また、直管形LEDランプについては、LEDと管の間を出来るだけ距離を取るように設計され光の均一性と光の広がりを実現している(図3)。 小電力のLEDを直線状に光の面積を広げることで、光と熱を効率よく分散させているため、アルミの放熱板の体積を小さくすることができる。そのため、直管形でよく見られる発光面の裏側のアルミ放熱板がローム製は露出させず、ポリカーボネイト材を使用した管がすべてを覆っている。これにより、全体の軽量化を図ることもでき、たとえば、お客様が掃除などで取り外すときなど、金属部分に触る際(触っても感電しないが)の感電の恐怖心を解消することにも配慮している。 [図2] 他社ダウンライト(左上)、ロームのダウンライト(右上)と直管形LEDランプの光源(下) [図3] 直管形LEDランプの配光曲線(上)と断面イメージ(下) ロームの直管形LEDランプの仕様 (1) JEL801とローム仕様の比較 (社)日本電球工業会規格JEL801とローム仕様の比較を表1に示す。 この規格の光束2300lm/W以上を満足させるのは、ある意味簡単であるが、いかに電力を抑えるかが最も重要な課題である。ロームではこの規格が制定される前より、空間を明るくするための広がりのある配光特性の実現、チラツキを起こさせない定電流駆動電源の開発を行っていたので、これらの技術対応は十分できていた。 課題となったのは電力を抑えることで、その鍵となるのはLED光源の発光効率の向上であった。LED光源の発光効率を上げるために、LED光源のモジュール化を液晶TVのLEDバックライト用途や、すでに商品化しているLED電球に採用しているモジュール工法を用いて開発を行った。結果的に発光効率109lm/Wの直管LEDランプの開発に成功した(写真1)。 [表1] JEL801とローム仕様の比較 [写真1] JEL801準拠の直管形LEDランプ(下はその口金部分) (2) ロームの直管形LEDランプ技術 従来の蛍光灯器具を活用しながら、LED照明で簡単にリニューアルができる直管形LEDランプも商品展開している(写真2)。 こちらの商品の大きな特徴は、直管の中にAC/DCコンバータと呼ばれる電源を内蔵していることで、AC電源を口金部より直接製品に給電できる。管の中には、ロームが開発した小型軽量の電気用品安全法(PSE)に準拠した高効率電源が入っている。 LED照明は長寿命が特長であるが、いずれ寿命は来る。蛍光灯の安定器にも寿命があるようにLED電源にも寿命がある。(社)日本照明器具工業会では、蛍光灯の安定器には寿命があると、安全確保のため点検、交換を呼びかけているが、LED照明も電源別置にすると将来同じことが予想される。 ロームは、規格(JEL801)に合った商品も提供しているが、上記の懸念を払拭できる商品提案も行っており、それが前に述べたAC給電可能な直管形LEDランプである。これは口金よりACを給電している電球形LEDランプと同じ考え方である。電球形LEDランプの方が小型であるため、設計の制約は厳しいが、十分な安全を確保している。 このようにLEDの光源とそれを駆動する電源を一体にする考えは高度な技術を必要とするが、ロームが提案する照明は、お客様が安全安心していただける商品の開発を第一義としていく考えである。 [写真2] 一般蛍光灯と同じG13口金仕様の直管形LEDランプ (3) 直管形LEDランプと一般蛍光灯の経済比較 間口18m×奥行18m×天井高2.7mの部屋に設置された64台の蛍光灯(FLR40W)を直管形LEDランプに交換した場合のシミュレーション結果を表2に示す。いずれの照明器具も2灯用逆富士型で、室内の平均照度はほぼ同等を確保する設定である。 器具単体の消費電力は直管形LEDランプのほうが41W少なく、結果として年間消費電力量・年間電気料金ともに、直管形LEDランプに変えると約48%の削減になるとの値が得られた。 [表2] 直管形LEDランプと一般蛍光灯の経済比較 今後の展開 ロームは、明るさばかりを求めるだけではなく、電力削減を意識せず自然に節電できる商品、人と光を調和させる商品など、市場ニーズにあった付加価値の高い商品展開を図っていく。たとえば、センサを用いて明るさの調節が自動で出来る調光システム、人のサーカディアンリズム※に合わせて朝から夕方にかけ色温度が変化していくような商品など、LEDらしさを出せる商品展開である。 ※ 多くの生物に備わっている、昼と夜をつくり出す1日のリズムのこと。約24時間を周期とする。 こういった付加価値の高いLED照明は、シーリングライトやペンダントライトといった一般照明「AGLED」として2011年10月よりすでに発売を開始している。(写真3) [写真3] 「AGLED」シリーズ製品例.左上から、トラフ形(1灯),逆富士形(1灯), 逆富士形(2灯),シーリングファン,ペンダントライト,ミニクリプトンスポットライト 「AGLED」シリーズには、ロームが誇る2665パターンの調光調色機能に加え、人間の生活リズムであるサーカディアンリズム機能を新搭載。日中は白色~昼白色、夜は落ちついた電球色とサーカディアンリズムに沿った最適な光が24時間自動で選択される(図6)。 本シリーズの製造販売を行うアグレッド(株)(旧・丸善電機(株))は、1921(大正10)年創業の老舗照明メーカーで、2010年11月にロームグループに加わった。90年以上にわたって照明器具の製造販売を行ってきたアグレッド(株)が持つ照明デザイン技術、光学設計技術とロームのLEDデバイス技術、高効率電源やLEDドライバと制御技術を融合することで、より高機能化・高品質化が進むLED照明で新しい価値を創造していく。 [図6] サーカディアン照明モード
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