掲載記事 Contributing Articles 開発背景 | BZ6Aシリーズの特徴(Saving space Design less Low hight) | 今後の取り組み 半導体メーカーのローム(本社:京都市)はこのほど、コンデンサやインダクタなど、スイッチング電源に必要な部品を1パッケージに収めた超小型電源モジュール「BZ6Aシリーズ」(図1)を開発した。 [図1] BZ6A1206GMの特徴とブロック図 プラグインタイプとして業界最小サイズ(2.3mm x 2.9mmx 1mm Max.)を実現し (図2)、小型、薄型化が進むモバイル機器の高密度実装に大きく貢献する。 この製品は、ローム本社(京都)で10月から既にサンプル出荷を開始、12月 から月産50万個の規模で量産を開始する予定である。 [図2] 外形図 開発背景 近年、スマートフォンをはじめとするモバイル機器は複数の無線通信機能、高画素カメラ、無接点充電機能、おサイフ機能等の多機能化が進み、部品点数の増加とともに回路内の必要電源数も増加している。これらの現状に対応するため基本的には各CPUメーカーがCPUとセットでプラットフォームを提案しており、プラットフォーム内には電源系機能を複数まとめたPMIC(Power Management IC)と呼ばれるプラットフォーム専用電源LSIも含まれている。 ただし、与えられたプラットフォームは各セットメーカーの実現したい機能に完全に合わず、独自色のある機能を追加した分だけ、機能ごとに供給する電源が必要となる。最悪の場合は1つの機能に対して2,3系統の電源が必要になる場合もある。この場合標準プラットフォームですでに決まっている数多くの部品に更に部品を追加する形となる。その結果、実装スペースが非常に厳しくなるのは明らかである。また、追加する機能によるリチウム電池の消費をできるだけ抑えたいので必然的に効率のよいスイッチング電源を使用することとなる。ただし、スイッチング電源はスイッチングノイズが発生するためパターン設計に気をつけなければ電源自身が正常動作しないだけでなく、周りにいるLSI等へ悪影響を与える場合もある。さらに、コンデンサやインダクタ等の周辺部品選びや配置にも細心の注意が必要となる。しかし、残念ながらほとんどの場合、セットメーカーの設計者にはこれらを検討するための十分な開発期間や人手がない状態である。 そのような状況への解決策として省スペースかつ電源回路の構成がLDO(Low Drop Out)よりも容易な「超小型1パッケージ電源 BZ6Aシリーズ」を開発した。 BZ6Aシリーズの特徴(Saving space Design less Low hight) 今回ロームが開発した「BZ6Aシリーズ」は、業界TOPクラスの6MHz動作の高速スイッチング゙電源LSI「BU9000Xシリーズ」(図3)を基板に内蔵するとともに必要な部品を基板に接続し、高さ1mmを守りつつ1パッケージ化することに成功。「BU9000Xシリーズ」には軽負荷時の効率UPを実現するPFM(Pulse Frequency Modulation)モードを搭載、かつ応答性の速いローム独自のコンパレータ制御方針のH3REG^(TM)制御を採用しており、モバイル機器に最適なLSIでスマートフォン等のモバイル機器にすでに実績ある商品となっている。 ほとんどのモバイル機器から要求されるパッケージの高さ1mmMax.を守るためにLSIを100μm以下とかなり薄くしている。ここまで薄くすると通常のLSIは応力の影響を受け、アナログの特性に影響が生じ、性能が悪化してしまうが、「BU9000Xシリーズ」は細心の注意を払い、応力の影響を受けにくい素子選びや素子配置(レイアウト)を施したことで今回のような超薄型化LSIにしても高精度化を実現できる。 [図3] 6MHz動作高速スイッチング電源LSI「BU9000Xシリーズ」 その結果、「BU9000Xシリーズ」の性能を維持したまま、最適なコンデンサ、インダクタを選択することで業界最小最薄サイズの超小型電源1パッケージ電源「BZ6Aシリーズ」(図4)を実現することができた。外付け部品を必要としないためスイッチング電源回路の設計がシリーズ電源よりも容易になるほか、超小型化で高密度実装が可能になり、各種機器の部品レイアウト期間や開発期間短縮に大きく貢献する。 部品管理点数や実装点数の削減、セットの部品レイアウトや注意すべきスイッチングラインの干渉問題もなくなる。 また、入力電圧範囲が2.3V~5.5Vと広いため、リチウム電池1セルで動作するモバイル機器のみならず、USB 5Vラインをリチウム電池と共有するモバイル機器やUSBラインを接続する機器(USBメモリや無線カード等様々なデバイス)などにも小型、低発熱を実現しつつ搭載可能となっている。さらに出力電圧も1.0V~3.3Vの範囲で個別対応でき、様々なデバイス用の電源として使用できる。外付け抵抗で出力電圧を変える製品もあるが、抵抗1本分の面積でも削減するために今回は固定タイプとしている。 [図4] 従来シリーズとBZ6A1206GMのパッケージ比較 今後の取り組み ロームは、今後大きく以下の4つに重点をおいて取り組んでいく予定である。 (1) 高周波数化― ロームでは、高効率高速スイッチング電源LSIを幅広く製品化しており、お客様からも高い評価をいただいている。特に昨年度のCEATECで展示したコイルレス20MHzスイッチング電源(図5)はお客様のみならず、競合半導体メーカーやインダクタメーカー、コンデンサメーカーにも大変興味を持っていただき、様々な反応をいただいた。今後もスイッチング電源LSIの高周波数化を推し進め、電源LSIのパイオニアとして新たなスイッチング電源の境地を切り開いていきたいと考えている(図6)。そのためにスイッチング周波数100MHzオーバーを目指した動きを従来のSiだけでなく、スピードが早いGaNも自社研究開発部隊とともに進めていく予定である。 また、高周波数化に合わせた電源モジュールの更なる小型化も図っていく考えである。LSIの高周波数化とともに1パッケージ電源も小型化していくことで、サイズが逆転しないようインダクタやコンデンサのトレンドを睨みながら時代に合わせた小型化を進めていく。(図7) (2) 大電流化― BZ6Aシリーズは650mA版だが、モバイル機器のトレンドに合わせて超小型を保ちつつ1A、2A品も開発予定である。それと同時に少電流版(300mA品)で更に小型にというアプローチも進めていく。 デジタル家電やPCといったより大電流が必要なセットに向けては、弊社のFETシリーズとの1パッケージ化を進めることで、各耐圧、各出力電流の小型化提案をしていく。 (3) 複合化― 電源の多ch化はもちろんのこと、ロームの商品ラインアップ(LSI以外も含む)を生かし、複合製品の1パッケージ化も加速させていく。商品の幅を広げるためにロームグループのLAPISセミコンダクタやKIONIXとの商品展開も進めていく予定である。 (4) 内蔵部品の多様化― 今回のBZ6Aシリーズは部品内蔵基板技術を用いLSIを内蔵した製品だが、製品に応じて内蔵する製品を抵抗、コイル、コンデンサと言った受動部品やFET、Di、SiC等の能動部品も対応していく予定である。 [図5] 外付コイルを基板パターン・コイルに 置き換えることに成功 [図6] 超小型化への挑戦 [図7] 1パッケージ電源へのロードマップ ロームは、これからもお客様が電源部を気にせずセット設計に注力していただけるような製品作りを目指していく(表)。 [表] BU9000Xシリーズ、BZ6Aシリーズ ラインアップ表
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