掲載記事 Contributing Articles インテル® Atom™ プロセッサー E600 番台 | 汎用性の高い回路を1チップに集積 | 社外との連携で広い用途に柔軟対応 | 業界に先駆けて「E600」用チップセットを発売 電源とI/O ハブを提供、開発効率向上に貢献 | 長年培ったノウハウを反映 | インテル® Atom™ プロセッサー E600 番台 マイクロプロセッサ世界最大手であるインテルは、組み込み機器向けの製品展開の強化に乗り出した。従来のパソコンやサーバー向けプロセッサに続く新たな同社の事業の柱にするために、組み込み機器向けプロセッサ市場を開拓する考えだ。 そのための主力製品が、「インテル® Atom™ プロセッサーE600 番台」である。同社は、2010年4月に中国北京市で開催された同社主催の開発者向けイベント「Intel Developer Forum 2010 Beijing」で、「Tunnel Creek」という開発コード名が与えられた組み込み向けプロセッサを開発していることを明らかにしており、その概要も紹介していた。このTunnel Creekが、インテル® Atom™ プロセッサー E600 番台である。2010年9月に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催された「Intel Developer Forum (IDF) 2010」で、2010年第4四半期から同プロセッサを発売することを正式に発表している。 汎用性の高い回路を1チップに集積 45nm世代のプロセスを使って製造する同プロセッサは、エントリーPC/ネットブック、携帯型情報機器、コンシューマ機器などに向けて同社が展開を図っている「インテル® Atom™ プロセッサー」の一つ。同シリーズの特長である86系命令セットに対応した低消費電力のCPUコアを中心に周辺回路を搭載した「SoC」と呼ばれているデバイスである。組み込み機器への展開を前提に設計されているのが特長だ。 具体的には、グラフィックス描画処理回路、動画処理回路、ディスプレイ・コントローラ、メモリ・コントローラ、オーディオ回路など、汎用性の高い回路をCPUコアとともに1チップに集積。アプリケーションに依存する機能のために必要な回路は、別の専用LSIに実装する。専用LSIとして想定しているのは、「IOH(Input Output Hub)」と呼ばれるアプリケーションに合わせたインタフェースを備えた入出力ICや、ASICやFPGAを使った専用回路などである。こうした専用LSIと接続するためにインテル® Atom™ プロセッサー E600 番台は、高速シリアル・インタフェース「PCI Express」を備えている。 社外との連携で広い用途に柔軟対応 専用LSIとのインタフェースに規格が広く公開されているPCI Expressを採用したのは、専用LSIについては、同社以外のサード・パーティが提供したり、機器メーカーが独自に開発したりすることを前提にしているからだ。同社は、標準的な入出力インタフェースを備えた汎用IOHを提供するものの、機器やアプリケーションに特化したLSIは、社外の半導体メーカーに任せる。こうすることによって、細分化した組み込み機器のニーズに効率よく柔軟に対応できる。 業界でいち早く専用LSIの製品化に乗り出したのが、OKIセミコンダクタである。2010年9月のIDFに合わせて、OKIセミコンダクタがIPメディアフォン向けとカー・インフォテインメント向けのIOHを発表。同時にロームもインテル® Atom™ プロセッサー E600 番台と同IOHを組み合わせたシステムに向けたパワーマネジメントLSIとクロック・ジェネレータICを発表した(図A)。グループ会社である両者は、これらのチップセットを基にしたリファレンス・ボードをIDFに展示。デモンストレーションも実施している。インテル®Atom™ プロセッサー E600 番台の正式発表と同時に、実際に動作するIOHが、いち早く公開されたことから会場では多くの来場者の注目を集めた。両者のほかにも、欧州の半導体メーカーなどがIOHの製品化する方針を明らかにしている。 [図A] ロームの「インテル®Atom™ プロセッサー E600 番台」向けチップセット ロームとOKIセミコンダクタは共同で、米Intel社の組み込み機器向けプロセッサ「インテル® Atom™ プロセッサー E600 番台」に向けたチップセットを開発。業界に先駆けて2010年9月よりサンプル出荷を開始した。「Intel社と密接に連携を図りながら、インテル® Atom™ プロセッサー E600 番台の開発と並行して設計を進めました。これによってチップセットをタイムリに提供することができました」(同社取締役 LSI開発統括本部長の高野利紀氏)。 チップセットを構成するのは、インテル® Atom™ プロセッサー E600 番台のIOH(Input Output Hub)、パワーマネジメントLSI、クロック・ジェネレータLSIの3種類。IOHは、カー・インフォテインメント用とIPメディアフォン用の2種類を用意した。IOHはOKIセミコンダクタ、パワーマネジメントLSIとクロック・ジェネレータLSIはロームが開発を担当している。「インテル ® Atom™ プロセッサー E600 番台向けのチップセットを一括して提供できるのは、いまのところ私たちだけではないでしょうか。2008年にローム・グループに加わったOKIセミコンダクタとロームの本格的なコラボレーションによる初めての成果だと思います」(高野氏)。 高野 利紀氏 ローム株式会社 取締役 LSI開発統括本部長 長年培ったノウハウを反映 このチップセットの大きな特長は、効率よくシステムが設計できるように随所に工夫が施されていることだ。 IPメディアフォン向けのIOH「ML7223」は、SATAやUSBなど標準的なインタフェースに加えて、GビットEthernet MAC、暗号処理回路、IPsecハードウエア・アクセラレータなどを搭載(図1)。さらにオプションで、ハンズフリー通話機能に欠かせないエコー/ノイズキャンセラ機能を組み込める。「通信IC を得意とするOKIセミコンダクタのノウハウをふんだんに生かしています」(高野氏)。 カー・インフォテインメント用IOH「ML7213」は、ビデオ入力/出力やUSBなど標準的なインタ フェースのほかに、車載ネットワーク「MOST」に対応した「Media LB®」などを搭載。車載部品の品質に関する規格「AEC-Q100 Grade 3 (TS-16949)」にも準拠する。 [図1] IPメディアフォン向けIOH「ML7223/ML7223V」 二つに共通する特長で見逃せないのが、FPGAを接続できるインタフェースを備えていることだ。「FPGAを利用して、個々にお客様特有の機能を追加できるようにしました」(高野氏) パワーマネジメントICの「BD9594AMWV(12V仕様)」と「BD9591AMWV(5V仕様)」は、いずれも20チャネルの出力を備えたシステム電源で、インテル®Atom™ プロセッサー E600 番台とIOHが必要な電源を1チップで供給することができる。しかも、複雑な電源シーケンスを制御する機能を備える。このため電源シーケンス制御のための回路を別に設ける必要がない。 クロック・ジェネレータLSI「BU7335MWV」は、システムで必要なクロック信号を一括して供給できる。「パワーマネジメントLSIとクロック・ジェネレータLSIは、敢えて別にしました。電源とクロック間のノイズ対策のしやすさなどを考慮すると分離した方が有利だからです」(高野氏)。 両社は、これらのチップセットを組み込んだリファレンス・ボードや、IOHとともに必要になるドライバなども用意し、インテル® Atom™ プロセッサーE600 番台のユーザーを積極的にサポートする考えだ(図2)。最新プロセッサを積極的に利用する組み込み機器メーカーにとって両社は強力な味方といえよう。 [図2] パスポートサイズのリファレンス・ボード「GOJYO」
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